1950年代から60年代にかけて都会に出た団塊世代の若者たちを中心に流行した「歌声喫茶」が9日、新庄市で復活する。同市に住む主婦の提案に、街おこしのNPO団体が協力。市中心部の飲食店を会場に、今後も月に1回程度、開催していく予定で、関係者は「団塊世代のパワーで、市街地に再びにぎわいを呼び戻し、『新庄流』の歌声喫茶として育てていきたい」と準備を進めている。 提案したのは、尾花沢市出身で新庄市大手町の主婦鏡淳子さん(72)。保育士として神奈川県内で働いていた20歳代の頃、当時流行の歌声喫茶に憧れていたが、仕事が忙しく行く機会が持てなかった。その後、結婚して夫の地元の新庄市に戻ったが、結局、一度も体験できずにブームは去っていった。 3年ほど前、たまたま東京などで歌声喫茶が復活しているというニュースを見つけた鏡さんは早速、インターネットで検索。すると、仙台市にも歌声喫茶があることがわかり、実際に足を運んでみた。 そこでは、60~80歳代の人たちが大声で歌を楽しむ姿があった。腰が曲がっている人でも元気に参加しているのが印象的だった。自身は初めての参加で思うように声が出せなかったが、「新庄でも開催したい」との思いを強くした。なかなか外出する気持ちを持てない高齢者にも、気軽に足を運んでもらえる場所になるようにも感じたという。 知人らに相談を繰り返していたところ、次第に賛同者が増えていった。商店街関係者の男性は「昔に比べ新庄が静かになっているのがずっと気になっていた。歌は活気が出てくるきっかけになる」などと協力。今年初めに新庄市で街おこしなどに取り組む「NPO―AMP」の関係者にも話が伝わり、同市中心部のシェフが日替わりの飲食店「七色」で、ランチとディナーの間の空き時間を生かして開催することになった。 新庄出身のオペラ歌手今田実奈さんが歌のリーダーとして参加。新庄市内で音楽を教える平桜いづみさんが、ピアノやアコーディオンの伴奏で協力する。 11月下旬には、同店で試験的に「歌声喫茶」が開催された。約40人が集まり、普段は歌う機会のない「新庄市民歌」をはじめ、「ふるさと」や「もみじ」など10曲を楽しんだ。どの人も最初は、照れくさそうだったが、最後は笑顔になったという。 9日は午後2時半から、「新庄市民歌」のほか、フォークソングやロシア民謡、唱歌、童謡など約10曲を1時間半かけて歌う。参加費は、お菓子と飲み物代込みで1人1000円。今後も月に1回程度、開催していく予定という。 鏡さんは「新庄では前例がないが、様々な世代の交流の場となる新庄独自の歌声喫茶を作りたい」と期待を込めている。 問い合わせは、NPO―AMP(0233・29・2279)へ。 (2011年12月8日 読売新聞)